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活動報告

国家戦略特区事業提案書

国家戦略特区事業提案書

 

地域活性化・国際観光振興のための「歴史的建築物活用事業」

 

 

1.提案のニーズや背景

 

  • 日本の各地域には、地域固有の宝であり、共有資産である古民家等の、いわゆる「歴史的建築物」(町家、武家屋敷、農家、庄屋、酒蔵場、銀行、医院、工場等)が存在している。

 

  • これらのうち、国等により重要文化財等の指定を受けたものについては、「保存」のための措置が講じられることになるが、それ以外の多くの歴史的建築物については、空き家化に伴う荒廃の急激な拡散、相続に伴う解体等が急速に進展し、我が国はその膨大な喪失の危機に直面している。

 

  • 一方で、こうした歴史的建築物については、宿泊施設、レストラン、カフェ、サテライトオフィス、芝居小屋、ギャラリー、物販、シェアハウス、福祉施設などとして積極的に「活用」し、商業・観光・暮らしの拠点や国内外への日本文化の発信のための拠点として、地域の活性化や国際観光などに貢献させたいとのニーズが飛躍的に高まってきている。[1]

 

  • このため、「全国の物件の中で、特に緊急に活用が急がれている、一定数の歴史的建築物」(地域再生特定物件)については、特定の区域内において、その活用を阻害する諸規制を総合的に撤廃していく事業(「歴史的建築物活用事業」)を明確に位置付け、本事業を「地域経済の活性化の突破口」としていく。

 

2.具体的なプロジェクトの内容

 

① 活用物件の発掘・改修・維持管理

  • 特区内の自治体、職人、工務店、自治会、中間組織(まちづくり会社等)、ヘリテージマネージャー[2]等が協力して、空き家化した歴史的建築物の現況調査、所有者との交渉、活用計画の策定等を実施。
  • 同活用計画に基づき、自治体、中間組織、または民間事業者等が空き家化した歴史的建築物を借り受け、または取得。その後、改修を実施し、入居者の公募・マッチングを実施。(歴史的建築物のテナントリーシング)
  • さらに、物件単体だけでなく、地区全体のコンセプトづくりやブランディング、販促活動等の自主的な地区価値の向上・維持管理事業を実施。(歴史地区のエリアマネジメント)

 

② 歴史的建築物の活用事業

 

  • 人口減少が進む歴史地区(城下町、港町、宿場町、門前町、街道町、在郷町、農村集落等)において、空き家となっている歴史的建築物を宿泊施設、カフェ、レストラン、工房、物販店、シェアハウス等として活用。
  • ヨーロッパの歴史地区のように地域固有の歴史的価値を生かした空間を創出。
  • 歴史的建築物の改修にあたっては、地域産材を積極的に活用。

 

③ 着地型観光の全国ネットワークの構築

 

  • 自治体、中間組織(まちづくり会社等)、民間事業者等が連携して、上述②の歴史的建築物をネットワーク化し、着地型観光の全国ネットワークを構築。
  • 特に宿泊施設に関しては、「ポザーダ[3]・ジャパン」(歴史的建築物活用のホテルチェーン事業)として一体的に運営。
  • 同施設においては、地域の特産農産物、伝統食を提供する他、祭、催事、芸能、工芸など地域固有の生活文化体験プログラムを提供。

 

 

3.想定される実施主体

 

■地方自治体

  • 空き家活用、地域再生、ツーリズム振興等の観点から総合的なまちづくりを実施
  • 登録文化財等の歴史的建築物の所有者として、事業に参画

 

■民間事業者(工務店、旅館業、飲食業、旅行業、IT会社、地方新聞社等)

  • 伝統建築に関する専門技術を持つ職人、工務店が改修工事を実施
  • 宿泊施設業者、飲食業者等が、テナント運営を実施
  • 第3種旅行業者、地域限定旅行業者が着地型観光プログラムを企画、販売
  • IT会社、地方新聞社等が地域情報発信や地域ブランド構築を支援

 

■中間組織(まちづくり会社等)

  • 空き家化している歴史的建築物の発掘、調査、流動化、事業者のマッチング
  • 歴史地区全体のコンセプトづくりやブランディング、販促活動等の自主的な地区価値の向上・維持管理事業を実施

 

4.事業実施のために必要な規制改革等事項

 

(1)「歴史的建築物に特化した審査会」の創設と、同審査会の同意に基づく指定物件の建築基準法適用除外

 

  • 現行制度では、建築基準法3条1項3号に基づき、文化財保護条例等による保存建築物として特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定することで、建築基準法を適用除外とすることが可能となっている。
  • しかし、歴史的建築物の「活用」を、建築市場、観光市場を形成する規模で普及していくためには、歴史的建築物に特化した審査会の設置による迅速な審査・指定の制度設計が求められる。
  • また、現在の建築審査会における審査は、建築基準法上の各種規制との関係のみを対象としており、歴史的建築物に関するその他の規制(旅館業法や消防法など)に関する一括した審査を行える場とはなっていない。
  • したがって、今回の国家戦略特区法に基づき、一定数の特区内の地方自治体(特定行政庁でない自治体も含む)においては、伝統工法等の専門家から構成され、その専門性により地域の歴史的建築物に特化した審査等を行う「歴史的建築物審査会」(仮称)を新設することとし、そこでの審査・同意を得て指定された「地域再生特定物件」については、建築基準法の適用除外とする。
  • また、「地域再生特定物件」については、建築基準法のみならず、以下のような旅館業法、消防法などの各種規制の特例措置を一括して受けられるようにする。

 

(2)旅館業法における新しい宿泊形態(「歴史建築型宿所(仮称)」)の創設

 

  • 「地域再生特定物件」については、現在の旅館業法が想定していない小規模な宿泊施設(9室以下のホテル、4室以下の旅館、農家等の一棟貸し)を含めて、「歴史建築型宿所営業(仮称)」として、整備できるようにする。
  • 具体的には、玄関帳場の設置その他の構造設備等も含めて、旅館業法施行令に定める「構造設備の基準」について、都道府県等(保健所)に代わって、「歴史的建築物審査会」が審査を行うことにする。

 

(3)消防法に関する他の規制との整合性の確保

 

  • 「地域再生特定物件」については、建築基準法や旅館業法の取り扱いと整合的な処理を行えるようにする。
  • 具体的には、消防長又は消防署長に代わって、「歴史的建築物審査会」による審査を行うことにより、消防法施行令32条に定める「消防用設備等の基準」の適用除外の扱いとする。

 

(4)その他、税制優遇措置など

 

  • 「地域再生特定物件」については、将来に渡る安全性、意匠等を担保するため、現状変更の許可申請手続きを義務づける。
  • 「地域再生特定物件」については、固定資産税の減免、相続税の納税猶予等の措置を講じる。

 

5.日本経済再生に向けた効果

 

1)地域再生の総合的な効果

  • 空き家となった歴史的建築物が活用されることにより、人が行き交い、以下のような多面的な効果が期待できる。
  • 町並みの保存、生活文化・食文化の復興、文化芸術の創造
  • 滞在型観光の振興、移住定住の促進、出生率の向上
  • 伝統建築技術や伝統工芸などの継承、内発型産業の創出、雇用の創出
  • 耕作放棄地の解消、里山の再生、森林の再生、林業の振興
  • 日本の暮らしの再生、誇りの創出

 

2)多様で自律的な国土の形成

  • 土地に根ざした内発型産業の創造により、自律的な地域経営を実現
  • 多様な文化クラスターに基づく広域観光圏を形成し、国際観光事業を実現

 

3)関係する日本再興戦略KPI(Key Performance Indicator)

課 題

項 目

PointⅡ 世界経済の活力を取り込めない日本経済

○訪日外国人旅行者

PointⅢ 企業活動の不活性化

○設備投資

PointⅨ 人材・雇用・教育分野

○20歳〜64歳の就業率

 

 

4)経済効果等の試算

◎投資額

  歴史的建築物(住宅)の残存数:149万棟[4]

  対象物件:149万棟×約2割(目標)≒30万棟

  30万棟×4千万円[5](1棟の平均修理額)=12兆円

  12兆円/30年(年間1万棟の修理を目標)=4千億円/年

◎雇用人数

  30万棟×5人[6]=150万人

◎訪日外国人旅行者

  30万棟×3割(ポザーダ目標割合)×20名[7](定員平均)×36.4%[8](定員稼働率)

  ×5割(外国人割合目標)×365日÷12日[9](平均滞在日数)≒997万人

 



[1] このような歴史的建築物の活用ニーズに対する制度状況に関しては、各国の規制のあり方や国と地方の関係の違いから単純な国際比較は出来ない。しかしながら、例えば国レベルの登録文化財(建築物)に関して、日本では9,250棟(平成25年8月1日現在、文化庁HP)であるのに対し、アメリカでも数万棟が、ドイツやイギリスでは数十万棟が登録されている。また、同時に各国ではそれらの歴史的建築物の評価、修理、保険等の市場が確立されており、歴史的建築物の活用にあたっての制度と市場が両輪で機能している。(後段の海外事例の出典:後藤治『都市の記憶を失う前に』、白揚社新書、2008年)

[2] ヘリテージマネージャーとは、歴史的建築物の保全・活用に携わる建築士。阪神・淡路大震災を契機に、兵庫県より始まり全国へ普及。都道府県の建築士会が所定の講習会を開催し、その修了者を登録。2013年現在、約400名が登録。(出典:(公社)日本建築士会連合会、ひょうごヘリテージ機構HPより)

[3]「ポザーダ」とはポルトガルにある歴史的建築物を活用したホテルチェーンのこと。スペインでは「パラドール」と呼ばれる。

[4] 昭和25年以前の住宅数。(出典:総務省、「平成20年住宅・土地統計調査」)

[5] 平成21年(2009)〜平成25年(2013)の篠山市、朝来市、豊岡市における物販、宿泊施設等計17棟のリノベーション修理費の実績平均値4,240万円より。(出典:一般社団法人ノオト「空き家活用事業の実績」(平成25年4月1日現在))

[6] 出典:同上資料、平均4.9人

[7] 出典:同上資料、20人

[8] 出典:観光庁、「宿泊旅行統計調査報告」(平成24年1~12月)

[9] 出典:観光庁、「訪日外国人の消費動向調査結果及び分析年次報告書」、平成24年

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