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活動報告

古民家を活用したフレンチレストラン|ひわの蔵

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 篠山の第一印象を教えてください。

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知人に「おもしろいところがあるよ。」と言われ案内されたのが篠山でした。町おこし事業をしている篠山の人と出会いました。そのとき既に、ここ集落丸山で3棟の空家を古民家の宿にするプロジェクトも始まっていて、関係者に会ったときに「ああ、役者が揃っているな、元気のできることをやっていらっしゃるな」と感じました。篠山の魅力は農産物。素材としておいしいものが採れること。料理の仕事でそれを使ったら楽しいだろうな、と思いました。野菜の鮮度を大切にするのがフランス料理。きゅうり一本、畑から摂ってきたばかりのものは違います。美味しい。お客様もここまで来る途中、田舎の景色を見て、採れたて野菜を食べるぞ!と、もうスイッチが入っている。篠山マジック、丸山マジックってあります。ここで地方発信のフレンチをしていきたいと構想しました。でも実は始めは篠山でお店をするつもりはなかったんです。個人的に畑をしながら何かできたら、ぐらいに思っていました。ここに来たのは「ひと」の縁。人とのつながりがなかったら、ここに来てないかも知れません。
 

 レストランになっている建物はむかし蔵だった建物ですね。古民家を活用してお店にするときに大切にしたこと、ご苦労されたこと、エピソードを教えてください。

IMG_7325.jpgこの蔵は当時、駐車場になる予定で、傾いていて床も抜け落ち、壁もボロボロ...正直、「この蔵でレストランには無理!」そう思いましたが、篠山の環境、自然をみながら「ここで何かできるかも」と思いました。壊れかけた小屋がこんな風に生まれ変わるとは思ってもいませんでした。この改修を担当された建築家が「足さず、の人」。建物を昔の姿に戻すスタイルの方でした。この蔵も余計なものをほとんど作らず、新しく作ってもらったのが窓とカウンターぐらいです。蔵で中が暗かったので、光が入るようにしてもらいました。歴史のある古い建物で、フレンチレストランということもあって西洋の古いものをたくさん取り入れました。外国製のテーブル、棚、ランプ、グラスなどたくさん置いていますが、違和感なく溶け込んでいると思います。他に古民家ならではのエピソードと言えば、「生き物」のことですかね。もともと蔵だった建物だから、すきま風が吹く、天井からススが落ちてきます。でもお客様もこの自然環境だから「こういうものだ」と受け入れてくださっています。もし店の中に虫が入ってきても「そういうもの」と。これが神戸ならクレームになる。取り除いてほしい、席を替えてほしい、と言われるでしょう。でもここでは言われたことがありません。逆に「これが自然なんだ」と受け入れてくださっています。例えば、カエルが苦手なお客様の話。「カエル」という言葉を聞くだけでも嫌がる方なのですが、ご来店の前に必ず「カエル、出てますか?」とお電話が入ります。春から夏にかけては、ここ辺り、田んぼの周りにはカエルがいっぱい。ですから、そのお客様はカエルがいなくなる秋と冬だけいらっしゃる。でも年に数回来てくださいます。
 

 高柳さんはもともと神戸でフレンチレストランをしていらっしゃったと伺いました。。篠山と神戸で違うことは何ですか?

僕は神戸で「ジャン・ムーラン」というフランス料理店で修業をしました。そして「ジャンティ・オジェ」という店で独立、約20年間、神戸にいました。瀬戸内海の魚を中心に神戸らしいフレンチを作っていました。明石の海の幸を使うフレンチ料理です。でも地産地消のレストランではなかった。何をどこで仕入れてどう料理するか、を考えていました。言ってみれば、東京でも神戸でも並べられる食材でした。僕はずっと神戸で「このままでよいのかな」と考えていました。景色の見えない建物の中で、四季の移り変りは市場の野菜から感じるくらい。「ああ、六甲山が色づいてきたね」、その程度でした。いま篠山でやっていることは神戸とはまるで違う仕事です。篠山みたいに四季を肌で感じて仕事をしている料理人は少ないと思います。街中で生活している料理人はみんな「うらやましい」と言います。素材ありきのフレンチの世界。とってきた素材をシンプルな料理で、歯ごたえ・香を残しながら提供できる、しかも短い距離でできるところが篠山の魅力です。畑で取ってそのまますぐに調理できる。全然味が違いますよ。ここ丸山に来て一年ちょっと。新しい動きを模索しながら、ある意味なんでもできそうだ、やってみたいと思います。例えば、篠山でイノシシが捕れるのは予想していましたが、鹿がこんなに多いとは思っていませんでした。意外だったのは川魚が少ないこと。鮎なんかが出てくるとおもしろい。川で飼育できないかな?成功できるか分からないけど、そんな楽しいことばかり考えています。
 

 集落の魅力について教えてください。

IMG_7319.jpg僕の夢はその土地の魅力を生かしながら集落丸山と一緒に発展していくことです。都会では隣の人が何をやっていても気にならない、困らない。でも集落は違います。みんなで助け合っていく。例えば雪かきひとつそうです。ある程度積もったら雪かきが必要で、人が通るぐらいはしなきゃいけない。僕が忙しいときは、集落の誰かがやってくださっています。野菜もそう。いつ植えると良いのか、周りの人が教えて下さる。本に書いてある通りにすればよいのではなくて、その土地の気候・天気やいろいろな状態をみて、みんなが気にかけて教え合う。僕にはまだ集落のみなさんのような経験はありませんが、ちょっとだけみなさんより若いから自分なりにできることを担当したいと思います。何でもみんなで共有しておきたいと思います。自分1人ではできない難しいことも生活共同体として、それぞれ仕事は違ってもみんなで田畑を守っている。それが神戸とは違う、集落の暮らしであり、良さだと思います。
 

 高柳さんご自身も畑を耕しておられるのですか!?

はい!去年はいろいろ植えましたよ。トマト、きゅうり、なす、かぶら、白菜、キンカン...色々な樹も植えました。いまは地産地消のフレンチ調理店という特徴が出てきたと思います。形にとらわれないで、畑で今日とれた新鮮な野菜を目の前にして料理を考えています。この店を作るときに、唯一こだわったことがあります。それはカウンター席です。はじめの計画では、店内はすべてテーブル席でした。それをカウンター席に変更してもらいました。とってきた新鮮な野菜を目の前で調理する、プロセスも全部見てもらいながら、お客様に召し上がっていただく。そこにはこだわりたかったです。
 

 お店の名前「ひわの蔵」はどんな由来があるのですか?

フレンチ料理なのでフランス語にしようと思っていましたが、篠山に来れば来るほどこの景色に合う名前、日本名がいいなと思いました。せっかく蔵を使ったから「蔵」にしようと、インターネットで確認してみたら同じ名前の酒造蔵がいっぱい出てきました。これはいかん、そこで色の名前をつけたらどうかとひらめきました。初めてこの蔵に来たのが田植えのころで、集落に広がる田んぼからみどり色のイメージがありました。ひわ色です。薄みどりのきれいな色。「ひわ色の中の蔵」、それを縮めて「ひわの蔵」と名付けました。
 

 最後にこれから「篠山暮らし」を始める人にメッセージをお願いします。

IMG_7208.jpg多少は「郷に入っては郷に従え」。真剣にしていると、みんな形は違えど協力してくれます。全てのものに真正面から取り組むこと。仕事をリタイアして篠山に来る人は別として、ここで仕事をしながら生活していくのであれば、色々なことを正面切ってやっていかなければいけない。「何かあったら神戸に帰ったらいいかな」と思ってしまうから、僕は神戸の家を引き払いました。これが自分のポジションかな?楽しみ・やり甲斐はたくさんあります。僕なりにもがいていることも。正面に向かい「腰を据えて」、というのが必要でした。地元のネットワークに自分から溶け込むこと。こっちが挨拶すれば必ず返して下さる。こっちから近づいていくことです。勢いだけではここで仕事も生活もできない。篠山に来たのは、色々なものに乗っかり勢いだけだったかもしれないですが、こちらに来たら不安はいっぱい。自分で動かないと何もできません。最終的にやるのは自分しかいない。篠山での時間は篠山でしか使えません。料理の修行と同じです。よく外国に行って慣れない言葉と習慣に挟まれ苦しくてすぐ帰る人が居ますが、その土地でどれだけ一所懸命やるか、です。みんな思いや理念は持っている。いかにそれを整理するか。もと居た場所が居心地良いのはあたり前です。篠山は豊かだけど、やっぱり都会は便利です。不自由さをどうするか、それを逆手にとって「自分はここに何をしに来たか」を考えることで、自分にとって本当に必要なものが何か分かると思います。どんなにいい人生のレールが引かれても、ここで何をするのか、どれだけ真剣か、夢をつぶさずに現実も見ることが大切だと思います。フレンチをするなら、普通は大阪・神戸・東京でしょう。田舎スタイルをここでやっていく、というのがどういうことなのか、僕も考えています。この春に2人の新しいスタッフを雇います。彼らもそういうことを自覚して篠山で頑張ってほしいと思っています。「一所懸命、田舎暮らしをしましょう!」。

 



ひわの蔵
http://maruyama-v.jp/food/hiwa/
≪定休日≫水曜日、木曜日
≪ご予約≫079-552-5560
≪住所≫〒669-2361篠山市丸山42番地

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